卒業生からのメッセージ

‘20 歴史学コース Oさん

‘20 歴史学コース Oさん, 地方公務員

歴史学コースのカリキュラムにおいて、専門地域・分野にとらわれない科目選択は、揺るがない魅力としてあり続けているように思います。それは歴史という人類の営為の壮大な蓄積をただ一面的に把握するのではなく、多角的かつ批判的に捉える視野を養うという点では、非常に効果的であったと顧みることが出来ます。私は文献史学(琉球史、薩琉関係史)が専門であり、くずし字を読解することが最優先でありましたが、考古学の発掘実習や美術史の演習にも参加させて頂きました。それぞれの史料の取り扱いや分析方法について学んだ経験は、自身の専門分野においてはもちろん、様々な史跡等へ足を運んだ際の視点を豊かにし、解像度を引き上げてくれています。

制度上の観点で更に言及すると、卒業論文を指導する教員は学生一人ひとりに充てられますが、他分野のゼミ形式の演習等へ参加することが可能となっています。卒業論文の脱稿に向けては、先行研究と史料状況の把握と課題の抽出、史料の丹念な読解と分析、論の構成、そして幾重にも推敲を重ねる、「過去との対話」が求められます。担当教員の懇切丁寧な指導があっても、方向性に迷うことがありました。その荒波の中で、他分野の教員や学生から助言や指摘を頂けるチャンスがあるというのは、非常に心強く感じていました。そしてそれは逆もしかりで、学生同士で互いに刺激し合い、高め合う場が用意されていました。

このような環境にあっては、経歴も専門分野も大きく異なる学友や先輩・後輩との間に、授業かどうかに関わらず、その垣根を超えて腹を割った議論を可能にする、深く強い関係を築くことができます。オスマン帝国およびトルコ共和国を専門に研究している最も親しい友人とは、同じキッチンカーの丼ぶりを食べながら互いの研究について語り合い、日本中世史を専門にしていた友人とは、資料室で膨大な書籍に囲まれながら歴史教育について議論した思い出があります。こうした学友との繋がりが卒業論文を執筆する上での動力源となり、かけがえのない財産となっていることは間違いありません。

千葉大学卒業後、私は他大学の大学院修士課程を修了し、現在は公務員として、男女共同参画関係の部署に所属し、普及・啓発事業を担当しています。仕事上では、歴史学コースで刻みこまれた、上(支配者や権力側)からだけではなく、下(被支配者層やマイノリティ等)からの視点で物事を見ることの重要性を意識しています。ジェンダーバイアスや差別意識の払拭を行政が推し進める意義と、権力の側から社会規範を塗り替えようとすることの危うさの両方を肌で感じ、自らの内にある偏見とも闘いながら業務に従事しています。情報収集を行う際にも、正しい情報の在処を把握し、玉石混交な状態から批判的に精査していく姿勢を自然にとることが出来るのも、歴史学コースでの学びの成果と言えるでしょう。

結びに、本文をお読みになっているあなたが歴史学コースに入学した暁には、その置かれた環境を大いに活用し、充実した学生生活を送れることを願っています。

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