卒業生からのメッセージ

'12 行動科学科(現:行動科学コース) Uさん

'12 行動科学科(現:行動科学コース) Uさん,千葉大学大学院に進学

卒業生からのメッセージ

 私は、文学部行動科学科を卒業した後、大学院の博士課程を修了するまで、千葉大学で心理学の研究を続けてきました。他の人と比べて長い間、千葉大学に在籍していますが、大学の雰囲気は昔も現在も穏やかで、サークルや研究など、何かに専念するにはとても良い環境だと思います。そのような環境の中、大学院で研究生活を送れたことは大変幸せな経験でした。大学院での生活は、学部の頃とは異なり、研究スケジュールが個人の裁量に任せられるなど良い面もありますが、一方で、気を付けなければならない点も多くなります。ここでは特に、博士号取得を目標とした場合に、研究生活で注意すべき点を二つ紹介いたします。現在、大学院進学を考えている方,研究者を目指そうと考え始めた方にとって、少しでも参考になればと思います。

 注意すべき点のひとつとして、時間管理が挙げられます。博士課程の時間は限られているので、博士論文の提出時期から逆算して、研究スケジュールを作成することが重要になります。博士号の取得には、幾つかの研究を一つにまとめて博士論文として提出し、論文の審査を通過することが必要となりますが、博士論文を提出する条件として、心理学系の学会が刊行する学会誌に、自身の論文が二編以上採択されていなければなりません。社会科学系の学会誌は査読期間が比較的長く、一つの論文が採択されるまで、半年から一年以上の時間がかかります。また、博士課程では多くの場合、経済的な問題で、アルバイトの時間との調整が必要になると思います。そのため、はじめに数年単位の研究スケジュールを作成し、そのあとに、数ヶ月、数週間といった細かいスケジュールを組むことが重要になります。ただ、初めの予定通りに進むことは稀ですし、後の方に予定を詰め込み過ぎると、うまくいかない場合に焦燥感だけが募ります。博士課程では標準期間が3年となりますが、私の場合、学会誌への論文投稿の見通しが甘く、当初のスケジュールが破綻したため、博士号の取得に4年かかりました。余裕を持って、前倒しに予定を組むことをお勧めします。

 時間管理と同じように重要なものとして、モチベーションの維持が挙げられます。大学院への進学は自身が望んだことですので、研究に専念できる生活はもちろん楽しいです。しかし、同じ環境で研究を続けていくと、生活が単調になり、当初の目標に対するモチベーションが薄れていきます。リフレッシュをすることも重要ですが、それ以上に、継続的に研究に対しての客観的な評価を得ていくことが、研究生活では必要と考えています。これには、学会での発表や、論文の投稿など、大学の外に向けて情報を発信していくことが有効といえます。私の場合はモチベーションの浮き沈みが激しく、大変苦労しましたが、英語論文を国際誌に発表し、国内や海外の研究者から反応が得られたことなどは、以降の研究へのモチベーションを高め、維持するきっかけになりました。また、論文投稿は、比較的時間がかかりますので、学会や研究会に参加し、同じような興味を持つ、同年代の研究者と知り合いになることも有効です。自分と同様に、研究者を目指して頑張る人の姿は、大変良い刺激にもなるといえます。

 以上のように、時間管理やモチベーションの維持は、博士号取得を目標とした場合に大変重要になると考えています。一方で、これらは私の経験にもとづくものですので、必ずしも全ての場合に当てはまるとは限りません。根を詰めすぎると、精神的に不安定になることもありますので、研究そのものを楽しみつつ、諦めないで続けていくことが一番大切なのかなとも考えています。

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