学生による教員インタビュー

鎌田浩二先生(国際言語文化学コース)

国際言語文化学コース・鎌田浩二先生インタビュー

教員インタビュー:国際言語文化学コース 鎌田浩二先生

学生委員:本日はお忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございます。さっそくですが、鎌田先生の研究分野について教えていただけますか?

鎌田:私の専門は理論言語学で、特に英語と日本語における文法を中心に研究しています。語の配列についての研究ですね。少し具体的な例を挙げましょう。例えば私の博士論文(2009年)では、文法における右方移動現象と呼ばれる次のような例を扱いました。

(1)A book was recently published about collectors of jewels.

(2)尊敬している学生が増えていますよ、田中先生を。

 例文(1)では主語の一部の要素が、そして例文(2)では「尊敬している」の目的語がそれぞれ文末に移動しているように見えます。ところがこの現象はすべての文で容認されるわけではありません。次の例を見てみましょう。(文頭の*は容認されないことを示します)

(3)*A book about collectors was recently published of jewels.

(4)*尊敬している先生が増えていますよ、学生たちが。

 例文(3)ではof jewelsが、(4)では「尊敬している」の主語がそれぞれ文末に現れていますが、これらの文は容認されませんね。このように右方移動現象には、英語の例文(1)・(3)や日本語の例文(2)・(4)の間に見られるような容認度の差が生まれますが、その差が生まれる理由に関しては、英語の場合も日本語の場合も同様の説明ができます。それを示すため、先行研究の不備を指摘し、言語に関する原理と言語情報処理の原理を提案するなどしています。

 他にも、英語・日本語・イタリア語・ドイツ語・オランダ語・トルコ語の各言語において、右方移動現象が存在する言語と存在しない言語があることをうけ、言語情報処理の観点から統一的な説明を示すこともしています。このような言語現象を通して、人間の言語の本質を明らかにすることを目指しています。

学生委員:いま鎌田先生の授業にはどのようなものがありますか?

鎌田:今年度は英語学概説、英語学演習、英語学文献講読の3つを担当しています。英語学概説では、英語学を始めて学ぶ学生を対象に英語学の基本的概念について講義しています。内容としては、音の特性(専門用語でいう音声学・音韻論)、語の特性(形態論)、文の特性(統語論)、言葉の意味(意味論・語用論)といったものを主に扱っています。英語学研究に必要な基礎知識を習得して、英語学や言語学関連の専門文献が読めるようになることを目標にしています。

 英語学演習は、今年は英語統語論入門の授業を行っています。半分は講義形式、半分は演習形式となっていますので、テキストにある練習問題を解いて英語構文を分析してもらうこともあります。英語学概説が一年生向けとするなら、こちらは二年生・三年生向けでしょうか。

 最後の英語学文献講読は三年生・四年生が受講しています。今年は英語の時制、法助動詞を扱ったテキストを精読しています。テキストの内容も勿論大事なのですが、この授業では英語を正確に読み取るということを重視しています。受けている人はわかると思うのですが、厳しくやっています(笑)

学生委員:(笑)。そんな鎌田先生が今、文学部の学生に望んでいることはありますか?

鎌田:本を読んでください。もっとも文学部に入った学生は、基本的に本を読むことは好きだと思います。ただし、その種類が偏る傾向にあるのではないかと思います。おそらく文学作品は進んで読むけれど、自然科学の理系分野のものはあまり読まないんじゃないかな。特に国際言語文化学コースの学生たちは。比較的時間のある学生時代に、いままで自分が避けてきた、興味が持てなかった分野の書物にも手を出すと良いかもしれません。例えば、数学や物理があまり得意、好きではなかった人は、敢えて自然科学者自身が書いたエッセイ等の気楽に読めるものに触れ、もう少し詳しく知りたいと思ったら少し専門的なものにも手を出してみるのが良いでしょう。初心者向きに数式を使わずに書かれたものは多くあるので是非読んでみてください。今度図書館や書店に行った時、いつもと違う書棚に行き、この類の書物を手に取ってみると、今までとは違った知的世界に触れることができるのではないかと思います。

 それと、今言ったことと一瞬逆に聞こえるかもしれませんが、自分の得意なもの、専門分野に対しては深く学んでください。あまり狭すぎるのはお薦めしませんが、とにかくこの分野だったら他人には負けないと思えるものがあれば、そのことをきっかけに自信がつくと思います。

 要するに、自分の専門分野を深めながら、同時に他分野にも関心を向ける。そうした視野の広い勉強をしてもらいたいと思います。というのは、理系・文系問わず、諸科学の究極的目標は、アプローチの違いがあるにせよ、人間自身を知ることにあるからです。

学生委員:鎌田先生の学生時代についても少しお話いただけないでしょうか?

鎌田:高校生の時は特に英文法に興味があって、授業で説明された文法事項の例外を探しては先生によく質問をしていました。2年生の時、たまたまクラスの担任が英語の先生でしたが、私の英文法に関する質問に熱心に対応して頂いたことで、ますます英語・英文法が好きになりました。しかし、大学は理学部物理学科に入学しました(笑)

学生委員:えええ!理系にですか?

鎌田:というのは、高校生の時に英語そのものを研究する英語学という学問分野の存在をどういうわけか知らなかったので(笑)、大学では物理を学び、英文法の研究は趣味の範囲でやるしかないと思っていました。ところが大学入学後、英語学の存在を知り、文学部英文学科に3年次に編入学しました。そこで理論言語学に出会い、英語を経験科学的に研究する分野があることも知りました。少し遠回りをしましたが、かえってそのことが理論言語学を学ぶ上で役立ったと思います。

学生委員:なるほど。言語学に理系の知識が役立ったとは、意外なところで学問はつながっているんですね。ありがとうございました。では最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします!

鎌田:高校生は、他人、特に学校の先生から与えられた問題・課題に対して正解を出すことを主としていると思いますが、大学はそうした受け身的勉強方法から脱して、自ら学ぶ能動的勉強をするところです。大学生活4年間に、自分で何か問題を見つけ、正解は見つからないかもしれません、むしろ正解が無い場合が多いでしょう、ですが自ら考え解決しようとする習慣を是非身につけてください。

担当学生委員:及川千裕・金澤宏美・西城彰子

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