学生による教員インタビュー

一川誠先生(行動科学コース)

心理学専修・一川誠先生インタビュー

教員インタビュー:行動科学コース 一川誠先生

学生委員:本日はお忙しい中インタビューにご協力いただき、ありがとうございます。宜しくお願いします。まず初めに、「心理学」というものがどういう学問なのか、一般的に言って、何を研究する学問なのかを教えて頂けますか?

一川:一般的には、心の悩みを解決する、あるいは人の心の特性を理解しようとする、というような臨床的な側面の心理学をイメージする人が多いと思います。実際には、特に千葉大学で力を入れているのは、臨床的な心理学ではなく、科学としての心理学なのです。人間の心や行動を科学的にどこまで解明できるのか、そしてそのことによってどういう可能性が広がるのか、ということを研究しているので、“基礎心理学”“実験心理学”と呼ばれます。心理学にも様々な分野がありますが、千葉大では基礎心理学に力を入れています。

学生委員:なるほど。では、千葉大の行動科学コースには心理学専修の他にいくつかの専修がありますが、心理学専修とその他専修の大きな違いはなんでしょうか?

一川:人間についての特性を実験を通して理解しようとしているところですかね。認知情報専修は、分野としては近い研究をしていると思いますが、心理学が心理学的手法を用いて直接に人間の心理的特性を調べるのに対して、認知情報専修ではコンピュータを用いたシミュレーションや他の動物との比較により、人間の認知情報過程の特性を調べるという点が異なります。心理学的手法とは、例えば、環境要因や自然要因を変化させて、人間がどのように反応するかを測定する方法などのことをいいます。

学生委員:今までの話で、実験心理学という言葉が出てきましたが、やはり数学や理科の得意・不得意は関係するのでしょうか?また、英語などの能力は必要とされますか?

一川:基本的に数学に対するアレルギーさえなければ大丈夫だと思います。実際心理学で使うのは数学ではないので。ただし、統計は絶対に使うので、大学に入ってからちゃんと知識をつける必要があります。英語に関しても同様です。精読する必要はありませんが、論文などの意味が汲み取れる程度の英語力は必要になってきますね。

学生委員:やはり最低限の英語力は必要ですよね。数学は苦手意識がないということが重要なんですね。

一川:以前私は工学部で指導していたのですが、工学部の学生のように英語の苦手な理系の学生でも心理学の文献は読めていたので、最低限のレベルさえあれば大丈夫だと思いますよ。受験勉強のように全体的に意味を把握するというよりは、要点を掴む読み方が出来れば困ることはないと思います。まあ、読めるに越したことはないですけどね(笑)。

学生委員:学生に求めるもの、という観点でもう一つ質問したいのですが、心理学の研究をしていくにあたって、最も重要な資質はなんだと思われますか?

一川:自らいろいろなことを調べよう、という探究心を持っている人ですかね。特に千葉大で扱っているのは実験心理学が多いので、自分自身でテーマを決め、研究を進めようと思える人が向いていると思います。

学生委員:ここからは一川先生の大学生活に関係した質問になりますが、普段大学における学生と関わり方を教えて頂けますか?研究室がどういう雰囲気かもお聞きしたいです。

一川:そうですね、研究室によって違いはあると思いますが、通常の授業以外に各学年で一週間に一回程度集まるゼミというものがあります。そこで、研究成果やこれからの研究テーマなどを発表したり、ディスカッションしたりしています。学生とのディスカッションの中で、ハプニングから新しい発見につながることも少なくないので、刺激があって面白いです。

学生委員:先程研究室についてお話を伺いましたが、一川先生の専門分野は何ですか?

一川:認知心理学です。その中でも僕は特に注意や見える/見えないの見落し現象などを主に研究しています。人間は普段感じていることがどのくらい環境情報と一致しているのか、ということですね。少し知覚心理学に近いかもしれませんが、知覚心理学よりもより意識などが関係した高次な過程を調べていると言えると思います。

学生委員:現在、具体的に研究しているテーマはありますか?

一川:注意の向け方によって時間の長さの感じ方がどう変わるか、タイミング・同時性への関わり方によって人間の感じ方がどう違うのかなど研究しています。見落し現象については長く研究しているのですが、人間って見ているようで見ていないんですよ。どこまでわかっていて、そしてどこからが人間の頭の中で付け足されている事柄なのかなどを調べています。

学生委員:なるほど。確かに先生は授業でもよくビジュアルを用いて見落しの例などを示して下さいますよね。

一川:そうなんです。心理学で特権的な特徴だなと思うのは、物理学や化学は実験をして測定値で結果を見ますが、心理学は実際に自ら変化などを体験できることです。学会などでは、研究者同士がそれぞれの発見を実際に見て、驚いたりしてますよ。自分が驚かされたりした現象などは、やはり学生にも見てもらって驚かせてやろうと思いますしね(笑)。自分で経験できる、という点は知覚・認知心理学の魅力の一つでもあると思うので伝えていけたらな、と思っています。

学生委員:今、魅力的な点について教えて頂きましたが、逆に心理学を学ぶ上で苦労したことなどはありますか?

一川:興味のある事柄が多すぎて、研究する時間が足りないということぐらいですかね。他の学問でもそうかもしれませんね。

学生委員:先生が今まで様々な学生を見てきて、どんな学生に来て欲しいと思いますか?あるいはどのような学生が向いていると思いますか?

一川:自分自身で興味を持って、調べようという強い姿勢をもつ学生がいいですね。そういう学生から新しい発見を得ることができ、いろいろな理解が進むときがあるので。好奇心の強い学生が一人でも多く来てくれるといいなと思いますね。

学生委員:先生はどのような学生でしたか?

一川:やりたい研究ばかりしていて、あまり先生の言うことを聞かなかったので、教えにくい学生だったかもしれません。はっきり言って成績も良い方ではなかったし…大学院を受けると言ったら教授に驚かれましたよ。

学生委員:そうなんですか?意外ですね!

一川:私は「科学がどこまで人間を理解できるか」を知りたかったんです。だから心理学以外にも、社会学やピアジェやラカン(フランスの臨床心理の研究者)の思想を扱っていたフランス文学科なんかにも興味があったんですよ。最終的に心理学を専攻したのは、自分でデータを取る方が強いと感じたため、そして社会の中での人を見るより、個人の心的体験を調べた方が面白いのではと思ったからです。そういった考えで自分のやりたい研究に一直線で突っ走っていたので、先生の言うことを聞かなかったんです(笑)。

学生委員:逆に、そういう学生の方が研究に向いているのではないですか?

一川:そうかもしれないですね。だから我が身を振り返ると、言うことを聞かない学生をあまり怒れないんですよ(笑)。

 高校生に是非知って欲しいのは、大学に入ってからも、まだ選択肢があるということです。行動科学科の良い所の一つに、様々な分野の講義を受けながら、自身の将来を模索出来る点が挙げられると思います。そして、大学に入った暁には、自分の興味のあることに突っ走っていいと思います。それぐらいのエネルギーを持った人なら、自身の研究をしてもきっと面白く思えるはずですから。

学生委員:そうですね。私も残りの時間でいろいろな経験をしていきたいです。ありがとうございました!

【インタビューを終えて:学生委員からひとこと】

普段の授業では知ることができない先生の学生時代の話などをお聞きすることができて、驚きの連続でした! 自分が高校生時代(大分前ですが…)何を知りたかったかな、と思いをめぐらせる機会もなかなかなかったので、とても新鮮でした。初心を忘れずに精進したいと思います。

行動科学コースは知的好奇心を100%満たしてくれる場所です! 心理学専修では、自分のやりたい研究についてHow toからStep upまで教わることができるだけでなく、どの授業を受けても新しい発見に溢れています。大学生活を充実させたい方は、ぜひ千葉大学行動科学コースを視野に入れてみてください(^^)!

担当学生委員:鳥居淑乃

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