歴史学コースは,日本史,西洋史,東洋史から,考古学,美術史にいたるまで,多様な専門領域の歴史研究者により構成されています。ここでは,歴史学コースの概要を説明し,本コースが目指す歴史教育・研究の方針を紹介することにします。
歴史学は,人類の生み出した文化や社会の諸相を,変化・発展という時間軸に沿って研究し,それによって今日の人類が抱える諸問題を認識し解決するために貢献しようする学問です。本コースが目標としているのは,このような歴史学の課題に取り組むために,いままでの日本史・東洋史・西洋史・考古学・美術史といった狭い研究領域の枠組みにとらわれることなく,相互の方法を融合した広い視野に立つ<新しい歴史学>の獲得を目指し,学際的かつ超域的な研究・教育を実践することです。
歴史学コースは,文化財学講座・図像情報史学講座・歴史学講座の三つの分野から構成されています。文化財学講座は,主に考古学史料・民族学的史料などの「モノ」を中心に,図像情報史学講座は,図像史料・音声史料などの「イメージ」を中心に,そして歴史学講座は,文献史料としての「文字」についての研究を深化させるべく設定されています。歴史学コースに入学した学生は,それぞれの講座別に割り振られて編成されるのではありません。卒業までの四年間にできるだけ多くの授業に出て,歴史を見る眼を養うことが期待されています。特定の地域・方法論に偏ることなく,自己の関心に応じてさまざまな地域の歴史をさまざまな方法を媒介として学び総合していくわけです。
歴史学コースは日本史,東洋史,西洋史という歴史学における基本的な三研究領域を包摂し,アジア・アフリカ研究,イスラーム地域史,東南アジア史なども研究対象としており,中心から周辺を,そして周辺から中心を同時に照射するグローバルな歴史研究を目指しています。また,「モノ」を対象とする考古学関係の授業や,「イメージ」を対象とする美術史関係の授業を通して文献史料以外の扱いについても学習することができ,さらに,分野縦断的な視野のもとで歴史を考察する,思想史,宗教文化史,ジェンダー研究,人種・民族研究,都市史など新しい分野の歴史学に触れることもできます。
このようなさまざまな分野の講義に触れることで,高校までの歴史の勉強とは全く違う歴史学の世界に導かれることになります。本コースでは,卒業までの四年間に多様な専門科目を自由に履修選択できるようになっています。また必修科目としては,一年次にまず「人文科学入門」という少人数の導入ゼミがあり,ここで討論や発表の仕方など方法的訓練を受けます。二年次には「史学方法論」で歴史学の学問的メソッドを学びます。三年次・四年次には卒業論文構想発表会・準備報告会で報告を行います。そして,四年間の勉学の総仕上げが卒業論文です。卒論では,自己の問題関心に沿って課題を定め,四年間に学んだ方法・史料情報を駆使しつつ,多角的にその課題を掘り下げ探求することが求められます。