学生による文学部授業紹介

比較認知論(行動科学コース専門科目)

授業紹介:比較認知論

ハトの世界、ヒトの世界

ハトが見ている世界とヒトの見ている世界は、果たして同じなのでしょうか?

そもそも、人間はありのままに世界を見ているわけではありません。下の図を見てください。

図

2つの図形の中心の円の大きさを素直に比べてください。きっと→のほうが大きく見えますね? でも、実は2つの中心の円の大きさは一緒なんです。つまり、我々は実際の大きさではなくて、脳が作り出した幻の大きさをみているんですね。

しかし、ここで「へー、そうなのね。そう見えるんだ」で終わるとつまらない。そこで終わっていいのなら、まとめサイトでも見ておきましょう。大学で学ぶ以上、「どうして?」というのが気になります。どのようなヒトの機能が、この錯視を生んでいるのだろうか――そう不思議に思えてきます。

でもその疑問、どうやって調べればいいのでしょうか?

実は、ハトを用いて実験をしたところ、ハトは右側の図形の中心円の方が大きく見えているらしいことが明らかになりました。なるほど、どうやらハトとヒトが見ている世界は少し違っているようです。

すると、ハトとヒトが持つ認識の特性の違いが、この見え方の違いを生んでいることになります。この違いを調べれば、ヒトがどうしてこんな錯視をするのか、ということに迫れる気がしてきます。

「分かる」とは「分かつ」こと。ヒトと他の動物を分けて比較することで、人間の知覚のクセについて調べることができるのです。

このように動物の認知過程とヒトの認知過程を比較・研究する学問を、比較認知科学と言ったりします。

比較認知論の魅力

今回ご紹介する『比較認知論』はこの比較認知科学に関連した講義です。内容としては、主に動物の知覚や認知過程について学びながら、人間の認知特性への理解も深めていきます。他にも、今日の認知科学が成立するまでの歴史や基本的な注意事項などを、わかりやすく学べます。

やはりこの講義の魅力は分かりやすさ・内容の難易度の塩梅がピカイチであることでしょう!

「――ダラダラと話されて何の話かよくわからない」
「――内容が薄すぎて教科書読んでれば授業聞かずとも理解できる」
「――逆に難しすぎて何もわからん…… 」

中学高校の授業で生徒たちを苦しめた諸問題は、大学の講義でも当然付き纏います(しかも威力を増して!)。

しかし、この比較認知論では、担当の牛谷先生のスペシャル教務力がそのような問題をかなり軽減してくれています。

基本的な事項から体系的に、比喩なども交えながらわかりやすく教えていただける。まずこの理解のしやすさが本講義の魅力です。

ただし、基本的な事項だけなら、入門書を読めばすべて書いてあります。だからこそ、この講義はこれに終始しません。その先の専門的な知識や進行中の研究についても学ぶことができます。そのうえ、ちゃんと基礎知識は教えてもらえているので、少し難しい内容も理解することができます。正直高校の数学なんかよりずっと分かりやすくて、僕はめちゃくちゃ感動しました。

冒頭のハトの例以外にも、様々な動物を用いた実験について学ぶことができます。例えば、サバクアリというアリはどんなに歩き回っても自分の巣へは一直線に帰ることができるそうです。ヒト――すくなくとも僕にはとてもできない芸当です。いったいサバクアリは、どうやってこんな芸当を成し遂げているのでしょうか。――などなど、動物の脳の働きをどこか見下している人間諸君がきっと驚く情報が多々あります。

これから認知科学に触れたい、もしくは心理学や認知科学に興味があるという人には、是非とも受講していただきたい講義です。

紹介者:久下斐縁

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