文学部シラバス 2010年度|シラバス

学科 国際言語文化 授業コード 科目の種別 専門
単位数 2 期別 後期
曜日・時限 水5    
授業科目 比較文化交流論a
授業科目
(英文名)
Comparative Srudies of Cultural Exchange a
担当教員 須藤 温子
履修年次 2,3,4
教室 マルチメディア講義室
副題 父殺しと子殺し―生の永続と根絶の思想
概要 近年ベストセラーになった『カラマーゾフの兄弟』の謎解きの核心にあるのは「父殺し」である。ヨーロッパ人の心性に重くのしかかるこのテーマは、フロイトによってエディプス・コンプレクスとして意識され始めたが、「父殺し」は言うまでもなく「子殺し」とともに神話伝承の重要なモチーフであった。フレイザーの『金枝篇』は、まさに息子や妻が老いた王を殺し若い王を据える神話で始まる。「父殺し」あるいは「子殺し」という悲劇は、ヨーロッパ文化の中にどのように書き込まれてきたのだろうか。この講義では、ヨーロッパ文化における「父殺し」と「子殺し」という二つの系譜をたどりながら、これらの悲劇の核心にある権能の剥奪と譲渡について考えていく。
目的 しばしば父/王の身体の状態は、一家/一国の盛衰とアナロジー的関係におかれる。老衰した父/王殺しと若き息子への譲位は共同体や子孫の永続的繁栄を意味し、翻って「子殺し」はその根絶的危機を意味した。そこでこの講義では、「父殺し」、「子殺し」という慣行の社会的機能や文化的意味を、神話伝承、文学、絵画、映像などの具体的な資料をもとに考察し、理解することを目標とする。その際、5人の思想家・文化人類学者(ジェームズ・フレイザー、ジグムント・フロイト、エルンスト・カントロヴィチ、クロード・レヴィ=ストロース、エリアス・カネッティ)を軸に、現代社会にまで及ぶ「父殺し」と「子殺し」の問題性について多面的に深く掘り下げていく。

授業内容 1. オリエンテーション 神話、旧約聖書にみられる「父殺し」、「子殺し」
2. フレイザー(1)『金枝篇』
3. フレイザー(2)『金枝篇』と映画『地獄の黙示録』の比較
4. フロイト(1)『トーテムとタブー』 「父殺し」の原初的モデル
5. フロイト(2)『モーセと一神教』 モーセ殺害とトラウマ
6. フロイト(3)『快感原則の彼岸』 エディプス・コンプレクスとは
7. カントロヴィチ(1)『王の二つの身体』 「王殺し」の制度化
8. カントロヴィチ(2)王の自然的身体と政治的身体
9. レヴィ=ストロース(1)『構造神話学』 オイディプス伝説と不作神話
10. レヴィ=ストロース(2)ライオス王による「子殺し」
11. カネッティ(1)『群衆と権力』 ツォサ族(アフリカ)の強迫観念的「子殺し」
12. カネッティ(2)ファシズム心理と「子殺し」
13. ドフトエフスキー『カラマーゾフの兄弟』 現代文学にみられる「父殺し」
(※若干の変更もありうる)
履修要件 特になし
教科書・参考書 授業時にプリントを適宜配布する。
評価方法・基準 期末試験の成績に、授業時のコメントカードと出席率を加味して評価する。評価の基準は概ね7:3とする。
備考 特になし
▲ PAGE TOP