文学部シラバス 2003年度|シラバス

学科 国際言語文化 授業コード L4823101 科目の種別 専門
単位数 2 期別 前期
曜日・時限 火4    
授業科目 映像表現論
授業科目
(英文名)
Visual Art a
担当教員 鴻野わか菜
履修年次 2,3,4
教室 画情1
副題 映画・アートをとおして見る世界
概要 映画やアートの「見方」を、ヴィデオや画集などの映像資料を使って学びます。授業で実際に映画を見ながら、作品の背景や原作と映画の関係、また異文化接触や亡命、民族問題等について考えていきます。授業でとりあげる作品としては、『マトリックス』(ウォシャウスキー監督、近未来SF)、『チェブラーシカ』(ロシアアニメ)などを予定しています。
目的 NULL
授業内容 日本、外国の映画やアートの「見方」を、ヴィデオや画集などの映像資料を使って学びます。授業で実際に映画を見ながら、作品の背景や個々の場面の意味、原作と映画の関係、また異文化接触や亡命、民族問題等について考えていきます。
授業でとりあげる作品としては、『マトリックス』(ウォシャウスキー監督、近未来SF)、『イースト・ウェスト』(ボドロフ監督、ソ連の激動の時代を生きる男女の愛と亡命のドラマ)、『チェブラーシカ』(ロシアアニメ)、『2001年宇宙の旅』(コンピューターに知性と感情があるかという問題を描いた宇宙映画)、『ロリータ』(ナボコフの原作とキューブリックの映画の比較)、宮崎駿アニメ(アニメを通じた国際交流について考える)、日本や世界の絵本、ポスター、『ベルリン・天使の詩』(ヴィム・ヴェンダース監督、都市の神話と歴史について考える)などを予定しています。

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4月15日版改訂シラバス

〈この授業で何を学ぶか授業の目標〉
私たちが生きている世界は、様々な映像(ニュース、ドラマ、ポスター、広告、洋服やインテリアなどのデザイン、映画、美術、アニメ、漫画)に囲まれています。視覚芸術、映像について考えることは、自分の周囲の世界について考え、世界に対して自分の意見を持ち、表現するということでもあります。この授業の目標は、①映画や美術の「読み方」、解釈の仕方を学ぶこと、②映像を通じて比較文化の方法を学ぶこと(日本、ロシア、アメリカ、ユダヤなどの映画、美術をとりあげ、作品の背景にある文化の違いを考える)、③映像を通じて現代社会、国際問題について考えることです。
授業で学んだことを、どのように各自の専門(卒論のテーマなど)に役立てることができるかを考えつつ、積極的に授業に参加して下さい。たとえば、5/20には宮崎駿の『ラピュタ』を世界のユートピア文学との比較によって考察しますが、このテーマは映像だけでなく文学や歴史にも深く関わってきます。また6/3にはロシアの亡命作家ウラジーミル・ナボコフの小説『ロリータ』が、アメリカの映画監督スタンリー・キューブリック によって映画化された際、どのように内容が変わったかについて考えます。この回で学んだことを、原作と映画の関係の研究、亡命文学の研究などに応用してみてください。

授業の教材:毎回、ハンドアウトを配布


授業で扱うトピックス・授業日程

①方法論を学ぶ
4/15 オリエンテーション

4/22 シンボル(象徴)、アトリビュート(登場人物の持物)、コンテクスト(文化的、社会的背景)とは何か?
授業の目的:映像を研究する際の、基本的な方法を身につける。

授業内容:聖母マリアの絵に描かれる百合にはどんな象徴性があるのか、マルク・シャガールの絵に描かれるバイオリンや牛はどんなメッセージを持っているのか、西洋、東洋の絵画や映画において蝶はどんな意味を持っているのか、『千と千尋の神隠し』で異界の食べ物を食べた千尋の両親はなぜ帰れなくなったのか……など、具体的な例をあげながら、シンボル、アトリビュート、コンテクストの役割を学び、シンボルなどの調べ方(参考文献)を身につける。

参考文献:
柳宗玄・中森義宗編『キリスト教美術図典』吉川弘文館1990年
J.シュヴァリエ、A.ゲールブラン『世界シンボル大事典』金光仁三郎他訳大修館書店1996年
A.ド・フリース『イメージ・シンボル事典』山下主一郎他訳大修館書店1984年他

5/6の授業は学外授業に振り替え候補日:5/10(土), 5/11(日), 5/17(土), 5/18(日)
*学外授業1(東京都美術館)
〈栄光の宮廷文化とロシア正教ロマノフ王朝展〉
展覧会詳細はhttp://www.romanov.jp/index.html
学外授業の目的:4/22の授業でシンボル、アトリビュートについて学ぶ際、ロシア正教のイコンのシンボルも一例として取り上げる。日本でイコンを見る機会は少ないので、展覧会を通じて、授業で取り上げたイコンを実際に見て知識を深める。

②比較文化について考える
5/13 民族について考える:ユダヤ系アーティストの美術
授業の目的:日本に暮らしていると、「日本人であることはなにか」ということを考える機会が少ない。今回の授業では、①ユダヤ人アーティストの作品と生涯を通じて、民族、国民について考え、②異国で暮し表現するアーティストの姿を通じて、異文化交流への理解を深める。

授業内容:主に20世紀~現代のロシア系ユダヤ人アーティスト(マルク・シャガール、イリヤ・カバコフ、グリーシャ・ブルスキン、オスカル・ラビンなど)の作品と生涯を通じて、現代ユダヤ人のおかれた状況と作品の背景を解説する。

参考文献:
沼野充義編著『イリヤ・カバコフの芸術』(五柳書院1999年)
モニカ・ボーム=デュシェン『シャガール岩波世界の美術』高階絵里加訳(岩波書店2001年)
鴻野わか菜「バラノフ=ロッシーネ知られざるアヴァンギャルド画家」『窓2002年10月122号』(ナウカ2002年)18-21頁、
鴻野わか菜「天使の記録イリヤ・カバコフ『10のアルバム』」『多分野交流論集とどまる力と越え行く流れ文化の境界と交通』(東京大学大学院人文社会系研究科多分野交流プロジェクト2000年)245-260頁他

5/20 宮崎駿とユートピア:映画『ラピュタ』と小説『ガリバー旅行記』
授業の目的:①世界の文学、映画、文化に共通するユートピア、アンチユートピアのテーマについて考える。②ユートピア文学の断片を読むことによって、作品と社会の関係を考察する。

授業内容:①宮崎駿の『ラピュタ』の背景にあるユートピア文学の系譜(『ガリバー旅行記』)を詳しく考察する。②世界のユートピア文学全般を扱ったNorthrop Fryeの論文を紹介し、「ユートピア小説には、作者の理想とする世界観が反映されているか」という問題について、実例をあげて考える。

参考文献:
沼野充義『徹夜の塊ユートピア文学論』(作品社2003年)
Northrop Frye, “Varieties of Literary Utopias”, in Frye, The Stubborn Structure: Essays on Criticism and Society, Cornell U.P., 1970.
ジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』(手に入れやすい版で)他

5/27アニメにあらわれる社会、文化:『チェブラーシカ』とノルシュテインのアニメ
授業の目的:アニメなどの大衆文化に、その国の歴史、時代、社会がどのように表れているかを学び、大衆文化の研究方法を身につける。

授業内容:①大衆文化(例:日本の漫画、『ドラえもん』など)を研究した先行文献を紹介し、大衆文化の〈読み方(研究・解釈の方法)〉の具体例に触れる。②ロシアを代表する短編アニメ『チェブラーシカ』と『話の話』を鑑賞し、作品にロシアの社会、歴史、時代がどのように反映されているかを読み解く。

参考文献:授業前週に指定

6/3原作と映像、亡命文化
授業の目的:①原作との関係から映像を考える方法論を身につける。②亡命作家ナボコフの作品を通じて、亡命者による文化について考える。

授業内容:①原作と映画は独立した作品であるか、映画は原作に忠実であるべきかなどについてディスカッションを行う(例:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』、トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』)。また、ナボコフの長編小説『ロリータ』と、スタンリー・キューブリック監督による映画『ロリータ』を比較検討し、亡命、アメリカ文化というテーマがどのように変容したかを詳細に比較する。

参考文献:
ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳(新潮社1984年)
ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフ短編全集1,2』諫早勇一他訳(作品社2000、2001年)他

6/10デザインは生活、意識を変えるか?:アヴァンギャルドのポスター
授業の目的:私たちの生活をとりまくデザイン(インテリア、ポスター、衣服、建築)が、私たちの意識や生活にどのように関わっているかを考える。

授業内容:①デザイン(インテリア、ポスター、衣服、建築)と生活、意識の関係について導入ディスカッションを行う。②ロシア・アヴァンギャルド(1930年代)のポスターを取り上げ、社会・国家建設のための道具として考えられていたデザインを学ぶことにより、デザインの特質について考える。

参考文献:
海野弘『ロシア・アヴァンギャルドのデザインアートは世界を変えうるか』(新曜社2000年)
亀山郁夫『ロシア・アヴァンギャルド』(岩波新書1996年)他

6/17の授業は学外授業に振り替え候補日:6/21(土),6/22(日), 6/28(土),6/29(日)
*学外授業2(東京現代美術館)6月上旬までに日程を決めます
〈田中一光回顧展戦後グラフィックデザインの第一人者田中一光の全貌に迫る〉
展覧会詳細はhttp://www.mot-art-museum.jp/ex/plan5.htm

学外授業の目的:6/10の授業でポスターの役割、機能、デザインについてレクチャーとディスカッションを行い、その後、学外授業で日本のポスターデザイン第一人者の田中一光の展覧会を見ることによって、ポスターについての知識と理解を深める。なおこの展覧会は、建築家安藤忠雄、アーティスト横尾忠則らが協力した大規模な展覧会で、未発表作を含む400点が展示され、開催前から話題を呼んでいる展覧会である。


③映像にみる現代社会、国際問題
6/24民族は映像でいかに描かれるか(差別問題):ブロードウェー・ミュージカルと映画
授業の目的:①映像において民族がいかに描かれているかということを考える際に有効な視点、方法論を身につける。②民族差別を助長するというメディアの負の役割について研究する。

授業内容:映像の中で特定の民族がどのように描かれているか、ブロードウェー・ミュージカル『ミス・サイゴン』と『エム・バタフライ』、及び映画『エム・バタフライ』(監督:デビッド・クローネンバーグ1993年アメリカ)、『シンドラーのリスト』(監督:スティーブン・スピルバーグ、1993年アメリカ)、『ロシアン・ブラザー』(監督:アレクセイ・バラバーノフ1997年ロシア)を題材に考える。

参考文献:
港千尋『映像論――「光の世紀」から「記憶の世紀」へ』(NHK出版1998年)
鴻英良『二十世紀劇場歴史としての芸術と世界』(朝日新聞社1998年)他

7/1、7/8学期末special
授業の目的と内容:普段の授業では、映画を全編通じて鑑賞する時間はないので重要な場面だけをピックアップして見るが、学期末specialでは、亡命、社会主義、国家とスポーツ、国家と音楽など様々な現代的テーマを含んだ映画『イースト/ウェスト遥かなる祖国』全編(監督:レジス・ヴァルニエ、1998年フランス・ロシア・スペイン・ブルガリア合作)を2回に分けて鑑賞し、様々な視点から作品を論じる。
参考文献は授業前週に指定。

7/1社会主義における〈空間〉(住宅、収容所):『イースト/ウェスト遥かなる祖国』前半

7/8国家とスポーツ(ロシア、ドイツ、日本の運動教育、オリンピックを例に):『イースト/ウェスト遥かなる祖国』後半

7/15テスト

7/22テスト返却・解説

7/29予備日

*ゲストスピーカー
ラトヴィア国立東洋美術館専門学芸員エレーナ・ヴィクトロヴァ氏が、国際交流基金の招聘で5月に千葉の美術館で浮世絵研究を行う。ヴィクトロヴァさんの都合がつけば、5月20日か27日(あるいは6月初旬)の授業で、ゲストスピーカーとして、異文化交流、海外での日本美術研究などをテーマに講演を行ってもらう予定。(その場合、授業で扱うトピックスを一部変更する)

〈成績評価〉
出席20%、授業中のコメントカード30%、学期末試験50%
*但し、学外授業への出席、欠席は、成績評価の対象にしない

試験日時:7月15日(火)14時30分~16時、画像情報教室
試験内容:「授業で扱ったテーマひとつを選び、参考文献も参照しつつ、自由に論じなさい」
ノート、参考文献、プリント持込可。A3答案用紙1枚を標準とする。
枚数が多いため試験時間中に清書できないと予想される者は、事前に別紙にまとめたレポートを当日提出しても構わない。

*就職活動等で7月15日に試験を受けられない者は、7月22日(火)4時までに、上記の試験問題(「授業で扱ったテーマひとつを選び、自由に論じなさい」)の解答をA3答案用紙1枚程度にまとめて、文学部2階庶務課前メールボックス室の鴻野のメールボックスに提出すること(なおその際、提出答案のコピーを必ず手許に残しておくこと。

*チェック漏れを防ぐため、7月24日(木)に、試験を受験したかレポートを提出した全学生の学生番号を載せたプリントを、文学部1階掲示板に掲示する。試験を受けた、あるいはレポートを提出したのに、万が一自分の学生番号が載っていない場合は、必ず7月28日(月)までにメールか電話で鴻野に連絡すること。成績は7月29日(火)に事務に提出します。

試験返却と解説:7月22日(火)14時30分~16時、画像情報教室

履修要件 映像、アートに興味のある他学科、他学部の学生の履修も歓迎します。
教科書・参考書 ビデオ、プリント、CD
評価方法・基準 出席20%、授業中のコメントカード30%、学期末試験50%
*但し、学外授業への出席、欠席は、成績評価の対象にしない
備考
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