文学部シラバス 2003年度|シラバス

学科 国際言語文化 授業コード L4936101 科目の種別 専門
単位数 2 期別 前期
曜日・時限 火2    
授業科目 映像表現論演習
授業科目
(英文名)
Seminar on Visual Art a
担当教員 鴻野わか菜
履修年次 2,3,4
教室 文演1
副題 映画、アートを「読む」
概要 日本、外国の映画やアートの「見方」、研究方法を、ビデオや画集などの映像資料を使って学びます。実際に映画や絵画を見ながら、その鑑賞・研究方法(個々の場面やモチーフの持つ意味、作品の構成、原作と映画の関係、字幕など)について考えていきます。映画論や美術論をいくつかピックアップして購読したり、作品についてディスカッションします
目的 NULL
授業内容 日本、外国の映画やアートの「見方」、研究方法を、ビデオや画集などの映像資料を使って学びます。実際に映画や絵画を見ながら、その鑑賞・研究方法(個々の場面やモチーフの持つ意味、作品の構成、原作と映画の関係、字幕など)について考えていきます。映画論や美術論をいくつかピックアップして購読したり、作品についてディスカッションします。
分かりやすく学ぶために、各自がひとつ好きな作品(映画、美術、アニメ、コミックス)か好きなアーティスト、あるいは興味のあるテーマを選び、それを軸に、作品についてどのように調べていけばよいか、そのアーティストの魅力を他人に伝えるにはどうすればよいか、どのような時代背景や文化状況で作品が生まれてきたか、などを考えていき、意見交換します。

---------------------------------
4月15日版改訂シラバス

〈この授業で何を学ぶか授業の目標〉
私たちが生きている世界は、様々な映像(ニュース、ドラマ、ポスター、広告、洋服やインテリアなどのデザイン、映画、美術、アニメ、漫画)に囲まれています。視覚芸術、映像について考えることは、自分の周囲の世界について考え、世界に対して自分の意見を持ち、表現するということでもあります。この授業の目標は、①映画や美術の「読み方」、解釈の仕方を学ぶこと、②映像を通じて比較文化の方法を学ぶこと(日本、ロシア、アメリカ、ユダヤなどの映画、美術をとりあげ、作品の背景にある文化の違いを考える)、③映像を通じて現代社会、国際問題について考えることです。ですが、もっとも大切な目標は、映像文化を身近なものとして感じ、どんな作品に対しても自分の意見を持つことができるようになることです。
受講者は、自分の興味、専門に近いテーマを1つ選び、事前に参考文献を読んで、授業で発表することが求められます。その発表をもとにディスカッションを行います。
授業で学んだことを、どのように各自の専門(卒論のテーマなど)に役立てることができるかを考えつつ、積極的に授業に参加して下さい。
映像表現論演習は、火曜4限の映像表現論(講義)と連係しながら進めていくので、できれば両方を受講することが望ましいです。

授業の教材:毎回、ハンドアウトを配布。発表者の担当が決まった次週以降、詳しい参考文献を紹介する。

授業で扱うトピックス・授業日程(予定)

4/15 オリエンテーション

①導入
4/22映像を通じて何を考えることができるか?(1):大衆文化を〈読む〉
授業の目的:①大衆文化の〈読み方〉を学ぶ。②民族問題に関心を持つ。③映像に描かれる民族像を考える。④作品のコンテクストの重要性を理解する。⑤シリーズ(連作)の機能を理解する。

授業内容:アメリカの連続ドラマ『X-file』(Season 4415話『Kaddish(邦題:魂のない肉体)』)に表れるユダヤ人像について考え、作品の背景にあるゴーレム伝説との関わりを考える。また、『X-file』シリーズ全体におけるこの作品の位置を考察する。

5/6の授業は学外授業に振り替え候補日:5/10(土), 5/11(日), 5/17(土), 5/18(日)
*学外授業1(東京都美術館)
〈栄光の宮廷文化とロシア正教ロマノフ王朝展〉
展覧会詳細はhttp://www.romanov.jp/index.html
学外授業の目的:今学期、ロシアのいくつかの映像文化をトピックスに選ぶので、展覧会を通じてロシア文化の底流にある正教文化について基本的な知識を得る。

5/13 映像を通じて何を考えることができるか?(2):好きな絵、嫌いな絵
授業の目的:①美術と生活の関係について考える。②国民によって好きな絵、嫌いな絵が本当に異なるか、という問題を考える。

授業内容と発表例:二人組のアーティスト、コマル&メラミドは、各国をまわって「好きな絵、嫌いな絵」アンケートを行い、集計をもとに「その国で一番好かれる絵、嫌いな絵」を創作するプロジェクトを行っている。授業では、このプロジェクトについての資料を発表者が紹介し、ゼミの参加者にアンケートを行い、このゼミのメンバーの「好きな絵、嫌いな絵」を作成する。

講義との関連:講義では、ロシア系ユダヤ人アーティストの概説を行うが、ゼミでは10月来日予定のコマル&メラミドのプロジェクト「好きな絵、嫌いな絵」を通じて、生活と美術の接点について考える。

参考文献:Komar & Melamid: The Most Wanted Paintings on the Web
http://www.diacenter.org/km/index.html

②比較文化論的視点を養う
5/20 20世紀をどう〈記憶〉するかについて考える:イリヤ・カバコフ『プロジェクト宮殿』
授業の目的:①20世紀を記憶することをテーマにした様々な映像作品について考える。②美術館をテーマにした作品について考える。

授業内容と発表例:発表者は、ユーモアあふれる絵本のような性格をもつイリヤ・カバコフの代表作いくつかを選び、ゼミで紹介する。一見面白おかしい作品が、実は人類の記憶、戦争の記憶をテーマにしていることに留意して、作品にどのように〈記憶〉のテーマがあらわれているかを考える。

講義との関連:講義では、ロシア系ユダヤ人アーティストの概説を行うが、ゼミでは「Art News誌」で「今生きているアーティストBest10」に選ばれた、現代アートの旗手イリヤ・カバコフに的をしぼって作品について詳しく考える。

参考文献:沼野充義編著『イリヤ・カバコフの芸術』(五柳書院1999年)

5/27 宮崎駿アニメ、及び日本のコミックスにおける少年と少女
授業の目的:日本のアニメ、コミックスは今、世界中で話題になり、欧米やアジアで日本アニメやコミックスに関するシンポジウムが開かれている。①日本のアニメ、コミックスに表れる文化の特性(たとえば少女像、少年像)について考える。できれば、外国のアニメ、コミックスにおける少女像、少年像と何が違うかについても考える。②日本のアニメ、コミックスは世界でなぜ人気があるのか、アニメを通じた国際交流の方法について考える。

授業内容と発表例:宮崎駿アニメ(あるいは日本のアニメ全般)における少年像、少女像を論じた論文を発表者が紹介し、作品についてディスカッションする。発表者は宮崎作品全般を扱ってかまわないが、できれば前の週までに、ゼミのメンバーに特に見てきてもらいたい作品1作を選んで通知すること。

講義との関連:講義では、宮崎駿の『ラピュタ』をユートピアのテーマに着目して分析するが、ゼミでは同じアニメをいかに違う(多様な)視点から研究することができるかを学ぶ。

参考文献:本田和子「これは少女ではない隠す性/顕わす性」『ポーラセミナーズ⑦「顕わす/隠す」4「顕わすシンボル/隠すシンボル」(ポーラ文化研究所1993年)96‐124頁他

6/3 アニメを〈読む〉ユーリー・ノルシュテインの作品
授業の目的:アニメなどの大衆文化に、その国の歴史、時代、社会がどのように表れているかを学び、大衆文化の研究方法を身につける。

授業内容と発表例:ロシアのアニメ作家ユーリー・ノルシュテインの短編作品数編をとりあげ、ビデオで鑑賞した後、発表者はノルシュテインについての文献を紹介する。①作品に歴史、社会がどのように反映されているか、②昔話がどのように映像化されているかなどについて考える。

講義との関連:講義では、『チェブラーシカ』とノルシュテインの『話の話』を扱うが、ゼミではノルシュテインの短編アニメ数点をとりあげ、ノルシュテインの物語世界にスポットをあてる。

6/10 原作と映像:『大草原の小さな家』、『ハリー・ポッター』シリーズなど
授業の目的:原作との関係から映像を考える方法論を身につける。
授業内容と発表例:発表者は自分の興味にあわせて作品(原作と映像化された作品があるもの)を選び、原作と映像の関係について自由に論じる(ただし、先行研究を参考にすること)。

講義との関連:講義では、『ロリータ』を中心に①原作と映像、②亡命について考えるが、ゼミでは受講者の興味にあわせ、原作と映像の関係について考察できる一作品を選び、実践的に学ぶ。

6/17の授業は学外授業に振り替え候補日:6/21(土),6/22(日), 6/28(土),6/29(日)
*学外授業2(東京現代美術館)
〈田中一光回顧展戦後グラフィックデザインの第一人者田中一光の全貌に迫る〉
展覧会詳細はhttp://www.mot-art-museum.jp/ex/plan5.htm

学外授業の目的:6/10の授業でデザインの役割について考えるので、その後、学外授業で日本のポスターデザイン第一人者の田中一光の展覧会を見ることによって、デザインについての知識と理解を深める。なおこの展覧会は、建築家安藤忠雄、アーティスト横尾忠則らが協力した大規模な展覧会で、未発表作を含む400点が展示され、開催前から話題を呼んでいる展覧会である。

③映像にみる現代社会、国際問題
6/24建築は生活を変えるか?:アヴァンギャルド建築
授業の目的:私たちの生活をとりまくデザインが、私たちの意識や生活にどのように関わっているかを考える。

授業内容と発表例:ロシアのアヴァンギャルド建築を中心に(しかし受講者の興味によって日本や欧米の近現代建築を対象にしても良い)、「社会、生活、意識を変えるために作られた建築」について考える。色々な発表方法が考えられるが、代表的な建築物を数点選び、その特徴、建築家、建築時の時代背景について紹介する方法が発表しやすいかもしれない。

講義との関連:講義ではデザイン全般について考え、具体例としてはロシア・アヴァンギャルドのポスターをとりあげるが、ゼミでは建築を中心にデザインの役割について理解を深める。

参考文献:
八束はじめ『ロシア・アヴァンギャルド建築』(INAX出版2001年)
海野弘『ロシア・アヴァンギャルドのデザインアートは世界を変えうるか』(新曜社2000年)
亀山郁夫『ロシア・アヴァンギャルド』(岩波新書1996年)他

7/1映像と民族問題:『シンドラーのリスト』と『ショアー』
授業の目的:映像において民族がいかに描かれているかということを考える際に有効な視点、方法論を身につける。

授業内容と発表例:映像の中で特定の民族がどのように描かれているか、『シンドラーのリスト』(監督:スティーブン・スピルバーグ、1993年アメリカ)と『ショアー』を題材に考える。発表者は、この2つの映画について書かれた文献を紹介する。
*あるいは、発表者の興味によって、民族に関する映像(映画、CM,美術)を扱った別のテーマを選んでも良い。

講義との関連:講義では、ブロードウェーミュージカル、アメリカ、ロシアの映画など様々な映像作品における差別問題を扱うが、ゼミでは『シンドラーのリスト』と『ショアー』を中心に議論し、今まで学んだことをいかして、ユダヤ問題を再考する。

参考文献:
鵜飼哲・高橋哲哉編『〈ショアー〉の衝撃』(未来社1995年)
クロード・ランズマン著『ショアー』高橋武智訳(作品社1995年)
港千尋『映像論――「光の世紀」から「記憶の世紀」へ』(NHK出版1998年)

7/8映像とスポーツ:国家のプロパガンダとしてのスポーツ
授業の目的:①映像とプロパガンダの関係、②スポーツとプロパガンダの関係について考える。

授業内容と発表例:スポーツはしばしば国威を高める目的で利用され、映像によって記録されてきた。この授業では、スポーツと国家の結びつきについて様々な視点から考える。具体的な視点としては、①オリンピック、②スポーツマンの彫像(ドイツ、ロシア)など。

講義との関連:講義では、映画『イースト/ウェスト』を中心に国家とスポーツの関係について考えるが、ゼミでは受講者の興味にあわせ、より広い視点から、映像を通じて見る国家とスポーツの関係を考える。

7/15今学期のまとめ(7/15の授業は研究室総合校舎A527)で行う。レポート提出日
7/22レポート返却・講評・解説
7/29予備日

〈成績評価〉
出席20%、ディスカッションへの参加20%、授業での発表30%、レポート30%
*但し、学外授業への出席、欠席は、成績評価の対象にしない

レポート提出日:7月15日(火)授業時
課題内容:「授業で扱ったテーマひとつを選び、参考文献も参照しつつ、自由に論じなさい」

*就職活動等で7月15日に学校に来られない者は、7月22日(火)4時までに、レポートを文学部2階庶務課前メールボックス室の鴻野のメールボックスに提出すること(なおその際、レポートのコピーを必ず手許に残しておくこと。
*チェック漏れを防ぐため、7月24日(木)に、レポートを提出した全学生の学生番号を載せたプリントを、文学部1階掲示板に掲示する。レポートを提出したのに、万が一自分の学生番号が載っていない場合は、必ず7月28日(月)までにメールか電話で鴻野に連絡すること。成績は7月29日(火)に事務に提出します。
履修要件
教科書・参考書 授業初日にプリントなどを配布します。
評価方法・基準 出席20%、ディスカッションへの参加20%、授業での発表30%、レポート30%
備考
▲ PAGE TOP